固形石鹸と液体石鹸の違いとは?
固形石鹸と液体石鹸の違いとは?
コロナ渦にある昨今、衛生意識が高まって感染症予防のために、
多くの方々が日常的に手洗いを徹底しています。
手洗いの時に石鹸がよく活用されますが、
皆さんは「固形の石鹸」と「液体の石鹸」のどちらを使っていますか?
私は液体石鹸(本来のハンドソープ)を使っています。
毎日使う身近な石鹸ですが、固形石鹸と液体石鹸の違いについてご存知ですか?
私には「液体石鹸は固形石鹸を溶かしたもの」と誤解していた時期がありました。
(ハウスクリーニング業を営む以前)
同じように想起される方もいるかもしれませんが、実態は全く異なります。
今回は「液体石鹸と固形石鹸の違い」に触れてみます。
原材料の違い
「動物の脂肪」や「植物性の油脂」を、
「水酸化ナトリウム」や「水酸化カリウム」等の強いアルカリ成分と
一緒に加熱することが石鹸づくりの基本です。
水酸化ナトリウムは苛性(カセイ)ソーダ、
水酸化カリウムは、苛性(カセイ)カリと通称され、
石鹸製品の表示ラベルに「カセイソーダ」や「カセイカリ」が
原材料として表記されていますが、
実はカセイソーダ、カセイカリのどちらを原材料とするかによって、
固形石鹸と液体石鹸のどちらになるかが決まります。
固形石鹸は、カセイソーダ(水酸化ナトリウム)を、
液体石鹸は、カセイカリ(水酸化カリウム)を原材料としています。
固形石鹸
油脂とカセイソーダ(水酸化ナトリウム)を反応させて加熱すると
固形石鹸や粉石鹸ができます。
油脂とカセイソーダが反応すると、副産物としてグリセリンができます。
このグリセリンをそのまま一緒に固めて造られる石鹸と、
食塩を加えることでグリセリンを分離させて(塩析法)、
純石けん分だけを抽出して造られる石鹸があります。
また、油脂に対するカセイソーダの使用料を減らすことで、
あえて鹸化率を下げて油分を残すとお肌にやさしい石鹸が造られます。
液体石鹸
カセイソーダの代わりに、
カセイカリ(水酸化カリウム)を使用すると、
液体石鹸ができます。
この液体石鹸は一般的にカリ石鹸と呼ばれています。
ただし液体石鹸であっても石けん分の含有比率が30%を超えると固まってきます。
この液体石鹸にナトリウムからできた石鹸を加えると、
共融現象が起きてずっと液状を保つことができます。
この方法でできた液体石鹸を「ナトカリ石鹸」と呼称することもあります。
製品名に「ソープ」が入っているのに石鹸じゃない!?
手洗い用の本来のハンドソープはカセイカリから造られた液体石鹸です。
しかしながら、製品名にハンドソープというワードを使用しているのに、
中身は合成洗剤であったり 石鹸と合成洗剤の混合物であったりする製品が存在します。
安全性を重視して石鹸をお求めの人は、
製品名に「ソープ」と書いてあっても製品表示ラベルをよく見る必要があります。
本来の石鹸は、油脂(パーム油やヤシ油など)と
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムからできており、
これらが反応してできる脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムが石鹸の素地です。
表示ラベルで、脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムの有無や
その含有量をチェックしてお買い物に活かして下さい。
石鹸の分類
家庭用品品質表示表という法律においては、
脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムのことを石鹸と呼んでいます。
カセイソーダ(固形石鹸の原料)の製造方法
欧州で産業革命が起こる前までは、
石鹸は木炭や海藻の灰と油脂を原料にして造られていました。
木炭や海藻の灰の性質はアルカリ性であり、
油脂を鹸化(けんか:石けん化)する作用があるためです。
欧州で産業革命が起こると、急激に高まるアルカリの需要に応えるために、
1970年にカセイソーダ(水酸化ナトリウム)の製造方法が
ニコラ・ルブラン(フランスの化学者)によって発明されました。
カセイソーダは石鹸の原料としてだけでなく、
化学工業の重要な原料として、
紙・パルプ業・繊維業・食品工業など多岐に渡って使われています。
(※化学調味料に含まれているグルタミン酸ソーダもカセイソーダが原料)
そのためカセイソーダは産業革命以降は工業的に大量生産されるようになりました。
カセイソーダの製造方法は、当初のルブラン方(ニコラ・ルブランの発明)から、
ソルベイ法へと代わり、さらに現在では海水の塩を電気分解する電解法が用いられています。
カセイソーダ単体の取り扱いは要注意
カセイソーダ(水酸化ナトリウム)は強アルカリ性で劇物に指定されています。
直接触れてしまうと手が荒れてしまったり、
誤まって目に入れてしまうと、最悪失明のおそれがあります。
もしもご家庭で石鹸を手作りするときには、
手袋とゴーグルを装着して手や目を必ず保護して下さい。
カセイソーダ単体だと危険で要注意なのですが、
油脂とカセイソーダが反応して中和され、
弱アルカリ性石鹸(脂肪酸ナトリウム)になってしまえば、もう安全です。
手づくり石鹸の作業手順
1:食塩水をつくる
水に食塩を入れて混ぜて食塩水を作ります。
これは後でグリセリンを分離させる時に使います。
2:アルカリ液をつくる
水に水酸化ナトリウムを入れて攪拌してアルカリ液をつくります。
この時には手袋やゴーグルを身につけて安全性を保ちます。
3:油とアルカリ液を一緒に加熱
油にアルカリ液を入れて加熱しながら ゆっくりと攪拌します。
油にはサラダ油やラードなどの廃食油を使うこともあれば、
コストを気にしなければ、アボカドオイルやココナッツオイル、
オリーブオイルなどを選択したり、
さらにお好みで香りづけにエッセンシャルオイルを数滴加えます。
4:食塩水を追加
油とアルカリ液を一緒に加熱するとドロドロに固まってきます。
そうしたら予め用意していた食塩水を加えます。
5:石鹸を取り出す
食塩水を入れたら石鹸が浮かんできます。
石鹸だけを取り出して下方に残った水分は捨てます。
6:石鹸を乾燥させる
取り出した柔らかい石鹸を箱に入れてます。
1日くらい経過すると固まってきます。
固まった石鹸を取り出してカットします。
カットした石鹸を風通しのいい場所に置いて1ヶ月くらい乾燥させます。
そうすると出来上がりです。
前の記事へ
« 洗剤が無かった昔は何を使って衣類を洗濯していたの?次の記事へ
石鹸の性質に何が影響している? »