粉石けんに入っている炭酸塩って何?
炭酸塩って何?
洗濯用粉石けんには、純石けん分だけで造られた「無添加石けん」がありますが、
市販されている大半の粉石けんには、「炭酸塩」が入っています。
この炭酸塩って何のことでしょうか?
「無添加石けん」は文字通り添加物は何もなく安全なイメージがあるので、
それと対比すると、「炭酸塩」が入っている粉石けんは、
「無添加じゃないから どうなの?」とちょっと怪訝に感じられることがありませんか?
初めて粉石けんを試される方々は安全性を求めている傾向にあるので、
添加物があると、それが何なのか気になっているはず。
今回は、実態がハッキリしない「炭酸塩」について触れてみます。
炭酸塩=炭酸ナトリウム=炭酸ソーダ
炭酸塩は、炭酸イオン(carbonate、CO32−)を含む化合物の総称です。
あくまで「総称」なので、複数の物質のグループ名のようなもので、
炭酸塩の中には、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどが含まれています。
と言う訳で、炭酸塩は本来、単一の物質を指しているのではないのですが、
石けんの業界では、炭酸ナトリウムのことを炭酸塩と古くから呼ぶ習慣がありました。
その習慣の影響が現在も残っていて、
粉石けんに炭酸ナトリウムが配合されている場合に成分表示として
炭酸ナトリウムではなく、あえて「炭酸塩」と表示しているケースが多いです。
また、炭酸ナトリウムは別名として「炭酸ソーダ」とも呼ばれています。
つまり、この場合において、
「炭酸塩」と「炭酸ナトリウム」と「炭酸ソーダ」は同じものです。
商品パッケージの成分としては「炭酸塩」と表示されている一方で、
粉石けんをいろんな媒体で調べていくと、
炭酸ナトリウムや炭酸ソーダというワードがあって、
ちょっと混乱しがちですが、3つとも同じものを指していて、
現在の、石けんの業界における扱いとしては、
炭酸塩=炭酸ナトリウム=炭酸ソーダと解釈されることが多いです。
炭酸塩は天然由来の洗浄剤
かつて、炭酸塩(炭酸ナトリウム)は、
草木や海藻を燃やして残る灰から抽出されていました。
ナトリウムが豊富な土壌で育った植物の中には多くのナトリウムが含有されています。
そういったナトリウムが豊富な植物の灰はソーダ灰と呼ばれていました。
ソーダ灰はpH11とやや強めのアルカリ性を示しており、
草木や海藻の灰を水で溶いた灰汁(あく)は、
昔から天然の洗浄剤として使われていました。
現在の製造方法では海水(食塩)と石灰石から作られることが多くなっていますが、
天然由来の無機物を原料としているため、
生分解の必要がなくて自然に還りやすいです。
石けんのサポート役を務める炭酸塩
ミヨシ石鹸株式会社の「そよ風」という洗濯用粉石けんを一例としてみてみます。
成分欄をチェックすると、
純石けん分(60%脂肪酸ナトリウム)、アルカリ剤(炭酸塩)と表示されています。
いわゆる「無添加石けん」と呼ばれる純石けん分100%で製造された製品と異なって、
「そよ風」の純石けん分は60%で、炭酸塩が加えられています。
洗濯用粉石けんは弱アルカリ性ですが、
衣服に染み付いている汗などの汚れは酸性のため、
洗っているうちに粉石けんを入れた洗濯槽の水が酸性化して、
洗浄力が失われることがあります。
この酸性化を防ぐために、アルカリ性の炭酸塩が配合されています。
炭酸塩の働きのおかげで、洗濯槽の水は酸性化することなく、
常にアルカリ性を保つことができて洗浄力も保持することができます。
炭酸塩入り石けんと無添加石けん、どっちがいい?
炭酸塩が配合された粉石けんを批判したり、
無添加石けんの方が上質で優れている、と訴求する方が一部にいますが、
実際のところ、どうなのでしょうか?
自然由来の物質
炭酸塩(炭酸ナトリウム)は、もともとは植物の灰から造られて、
天然の洗浄剤として活用されてきた歴史があります。
また炭酸塩(炭酸ナトリウム)は、現在では石灰石と海水(食塩)から製造され、
炭酸(二酸化炭素が水に溶けてできる)とナトリウム(食塩に含まれる)といった、
もともと自然界にごく普通に存在する物質からできているので、
自然にそのまま流しても生分解の必要がないので負担も少なめです。
また炭酸塩は天然温泉のお湯にも含まれていることが多い物質です。
なので、環境を大切にする、という観点において劣っていることはないです。
石けんを節約できるというメリット
炭酸塩のアルカリ性によって衣類の汗などによる酸性化を防ぐことができます。
そのため、炭酸塩が配合された粉石けんは洗浄力を失わずにしっかり働けるので、
粉石けんを大量に洗濯槽へ投入することがなく、
使用量を抑制できて石けんを節約できるという利点あります。
ウールや絹などの洗濯には注意が必要
ウールや絹といった繊維は、アルカリ性に弱いという特性があるため、
炭酸塩が配合された粉石けんを使用して洗浄すると繊維を傷めてしまう場合があります。
以上のことから、
炭酸塩が配合された石けんと無添加石けんを比較すると、
どっちが優れているか、ではなくて、
どちらも有用な石けん製品と捉えて「使い分け」がポイントになりそうです。
例えば、通常の洗濯では炭酸塩配合の粉石けんを使って、
ウールや絹などの洗濯にはアルカリ性が穏やかな無添加石けんは使う、
というように上手に使い分けると良さそうです。
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