菊の季節が到来

11月を迎えて愛好家によって丹精込めて育てられた菊の花が

各地の公園や神社仏閣で展示されるようになり、

菊の花を楽しむことができる季節になりました。

古くから「高貴な花」として菊は日本で愛されてきました。

今回は菊の歴史や、その種類について少しばかり触れてみます。

菊花の歴史

古くから中国で栽培されていた様々な品種の菊が日本に伝来し、

重陽の節句の風習と併せて「高貴な花」として日本に定着しました。

江戸時代になると栽培技術や品種の改良が進んで日本独自の菊文化が発展し、

嵯峨、肥後、伊勢など日本各地で特徴的な菊の花が作られました。

菊の栽培の専門書も発刊されるようになりました。

菊の鑑賞

江戸時代の人々は、

春に桜を見に出かけるように、秋には菊を見に出かけました。

菊人形の前身である菊細工が盛んになり、

白山や染井、駒込の辺りでは菊細工番付や道案内双六が作られました。

また一本の菊より接ぎ木して百種類の花を咲かせる百種接分菊が作られました。

重陽の節句とは？

旧暦の９月９日は「重陽（ちょうよう）の節句」、

別名「菊の節句」と言われています。

古来の中国では奇数を陽数（ようすう）といい、

縁起の良い数としていたことから、

陽数の最大値である９が重なるという事で「重陽」と呼ばれています。

江戸幕府は、中国の奇数を陽数とする風習を取り入れて、

１月７日を人日（じんじつ）、

３月３日を上巳（じょうし）、

５月５日を端午（たんご）、

７月７日を七夕（しちせき）（和名 たなばた）、

そして９月９日を重陽とし、

これらを総じて五節句（ごせっく）と定めました。

重陽の節句の習わし

菊酒

菊の花は香りが高く気品があるので、

長寿をもたらして邪気を祓うとされていることから、

酒に菊を浸したり、花びらを浮かべて飲みます。

菊の被棉（きせわた）

８日の夜に菊に真綿を被せて、

９日に夜露で湿ったその真綿で体を拭いて長寿を祈ります。

栗ご飯

農村では田畑の収穫の時期にあたり、

実りに感謝して栗ご飯で節句を祝ったことから

「栗の節句」とも呼ばれます。

大輪菊の種類

厚物

代表的な大輪の花形です。

花弁の先端がスプーンを伏せたように盛り上がって咲きます。

管物

細物、糸菊とも言われています。

花弁が中空の管状で放射線状に真っ直ぐ伸び、

花弁の先がカールして玉状になります。

美濃菊

岐阜県や愛知県で発達した品種です。

花弁が重ならず、一定の間隔で花芯を抱えるように咲きます。

大掴み

青森県八戸地方で改良された奥州菊の中から、

花弁数が多く握り拳を強く握り締めたように盛り上がって咲きます。

古くから八戸は菊の栽培が盛んで食用菊の産地です。

一文字菊

一重咲きの菊で、御紋章菊とも言われています。

花弁の先端がスプーンを伏せたように盛り上がり咲きます。

中輪菊の種類

伊勢菊

三重の松坂で発達した菊です。

細い花弁が垂れ下がって捻れたり、

縮れたりして咲きます。

江戸菊

１８世紀末〜１９世紀前半にかけて発達した菊です。

咲き始めにおいては花弁が全部垂れ下がり、

咲き進むと折れ曲がって花芯を包みます。

嵯峨菊

嵯峨天皇が愛し、御所に植えられていました。

糸のように細い花弁が立って咲きます。

肥後菊

熊本で作られ、

長い間、門外不出とされていました。

花弁数が２０〜３０個で一重咲き、

花芯部が緑色です

丁子菊

１８世紀初め頃から栽培されるようになりました。

花芯部筒状花が丁子のように盛り上がって咲きます。

小輪菊の種類

小菊

日本の菊の中で最も古くから作られた種類です。

性質が強く場所を選びません。

盆栽や菊人形などでよく見られます。