色物の衣類に使っていい漂白剤、使ってはいけない漂白剤
衣類用の漂白剤には、どんな種類があるの?
ハイターやオキシクリーンなど、
「漂白剤」として想起する製品が幾つかあります。
漂白剤は その名が示す通り、
「漂白する」「色などを取り除いて白くする」ためのもので、
その目的のために製造された酸化剤や還元剤を総称しています。
皮膚から発せられた汗や皮脂によるオレンジ色の汚れや、
食事の時に誤って料理を零してできた油脂汚れなど、
衣類に染み付いてしまったしつこい汚れをキレイにしたいときに、
漂白剤はその力を発揮してくれて とても役立ちます。
ただしその選択を間違うと、
キレイにしたい対象の素材を傷めてしまったり、
色素が抜け過ぎてしまったりと思わぬ失敗に至ることがあります。
今回は漂白剤の中でも「衣類用漂白剤」の種類と用途について触れてみます。
漂白剤は家庭用品品質表示法の適用対象
漂白剤は家庭用品品質表示法という法律が適用されています。
家庭用品品質表示法は消費者庁が管轄している法律で、
「家庭用品の品質に関する表示の適正化」
「消費者の利益の保護」
という2つの目的を果たすために制定されています。
この法律のおかげ、
漂白剤のパッケージには必ず、
品名/成分/液性/正味量/使用方法/使用上の注意、
などが表示されていて、
正しい使い方に導いて消費者の利益を保護することを図っています。
例えばパッケージの「品名」欄には、
その用途を適切に表現した用語に
「漂白剤」の用語を付して表示することが義務づけされているので、
用途別に「衣料用漂白剤」「台所用漂白剤」「住宅用漂白剤」などが表示されていて、
その用途(目的)が明確にされています。
また「成分」欄には
成分の種類の名称を示す用語の次に
括弧書きでその成分の系別を示す用語を付記することが義務づけられているので、
その漂白剤が塩素系なのか 酸素系なのかが一目で分かるように規定されています。
さらに「使用方法」欄には、
《イ》使用量の目安。
《ロ》標準的な使用方法。
《ハ》使用の対象とすることができるものとできないものの具体例。
《ニ》繊維に使用した場合の使用適否の試験方法(還元系のものを除く)。
《ホ》樹脂加工を施した繊維が黄変した場合の対処法(塩素系のものに限る)。
《ヘ》温水を使用する場合の効果(酸素系及び還元系のものに限る)。
これらの情報が表示されています。
《ハ》の該当情報があることで、
用途外のことで使用して望まない事態に陥ることを防いでいます。
(詳細はこちら:消費者庁HP 家庭用品品質表示法)
次に成分に基づく衣類用漂白剤の種類とその特徴をみてみます。
塩素系漂白剤
塩素系漂白剤は「次亜塩素酸ナトリウム」という、
とても強力な漂白作用を有している物質を主成分として含有しています。
その漂白力は強過ぎて、多くの染料を分解してしまう程の力があります。
そのため色物の衣服には不向きであり、
製品パッケージには 白物の衣服にしか使えないことが明記されています。
塩素系の衣料用漂白剤として有名な花王ハイターのパッケージには
以下のように表示があります。
品名 | 衣料用漂白剤 | ||
液性 | アルカリ性 | ||
成分 | 次亜塩素酸ナトリウム(塩素系)、水酸化ナトリウム(アルカリ剤) | ||
次亜塩素酸ナトリウム濃度:製造時約6%※ ※保管によりゆっくりと分解し濃度が低下しますので、一定の濃度に希釈する際には希釈方法をご確認ください。 |
|||
使えるもの | 白無地衣料専用 (白無地衣料でも使えないものがありますので注意してください。) |
||
●水洗い・家庭洗たくができる白無地のせんい製品(木綿、麻、ポリエステル、アクリル) ●下の取扱い表示のついたもの |
|||
<衣料が変色する場合があります> |
「成分」欄には次亜塩素酸ナトリウムが表示され、
「使えるもの」欄には、白無地衣料専用と明確に表示されています。
酸素系漂白剤(粉末タイプ)
粉末タイプの酸素系漂白剤は主成分として過炭酸ナトリウムを使用しています。
塩素系漂白剤のような色素を分解する程の漂白力は備わっていないので、
色物の衣服にも使用することができます。
ただし後述する液体タイプと比較するとその漂白力は強力なので、
絹や毛やレーヨンなどのデリケートな繊維の衣服には不向きで、
製品パッケージの「使えないもの」欄に、
天然繊維やレーヨン系の衣服が表示されていることがあるのでチェックが必要です。
酸素系漂白剤(液体タイプ)
液体タイプの酸素系漂白剤は主成分として過酸化水素を使用しています。
先述した粉末タイプの酸素系漂白剤は絹や毛の衣服には使えないのですが、
この液体タイプの酸素系漂白剤は 絹や毛も含めて全ての繊維に対して使用できます。
ただし、全部の繊維に使える代わりに汚れに対する分解力はそれほど大きくありません。
還元漂白剤
漂白剤には「酸化作用」を利用する酸化漂白剤と、
「還元作用」を利用する還元漂白剤があります。
上述した3種類の漂白剤(塩素系と酸素系2つ)は全て酸化漂白剤です。
還元漂白剤はハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素を主成分とする、
弱アルカリ性の性質をもつ粉末状の漂白剤です。
酸化漂白剤と異なる「漂白の仕組み」を持っています。
酸化漂白剤は酸化作用(対象と酸素を結びつける)によって汚れを分解しますが、
一方で還元漂白剤は対象から酸素を奪うことによってキレイにします。
酸化作用による劣化(繊維の黄ばみ)を回復することが期待できます。
例えば鉄サビなど酸化が進んだものによる汚れ(黄ばみ)は、
酸化漂白剤(塩素系や酸素系)ではなかなか落ちないのですが、
この還元漂白剤を使用すると、
酸素を奪う還元作用によって汚れが落ちることがあります。
酸化漂白剤で上手くいかない時に、
還元漂白剤で対応することが良さそうです。
漂白活性化剤
洗濯用洗剤(界面活性剤が主成分)の中には、
「漂白剤入り」を訴求している製品があります。
このような漂白剤入り洗濯用洗剤向けに、
「漂白活性化剤」が新たな物質として開発されて使用されています。
限られた洗濯時間で漂白効果を発揮できるようにするために
漂白活性化剤が配合されているのですが、
洗濯用洗剤だけなく、
酸素系漂白剤にも助剤として、
漂白活性化剤が追加されていることがあります。
洗濯用洗剤の漂白効果を高めたり、
酸素系漂白剤の酸化力を高める手段として、
それ自体は漂白効果を持たないけど、
洗濯液中(洗濯槽の水の中)で過酸化水素と反応することで、
酸化力の高い「有機過酸」に変わる物質の利用が注目されました。
これが「漂白活性化剤」と呼ばれるものです。
漂白活性化剤は一般の過酸化水素よりも強い酸化力を有していて、
少量追加すると、
従来の酸素系漂白剤を単独使用するよりも高い漂白力を示します。
また漂白活性化剤は「界面活性剤」に似た構造をしており、
界面活性剤と同じように分子の中に「親水基」と「親油基」があります。
親油基によって汚れに対して選択的に吸着する特性があります。
さらに親水基から酸素を出して酸化作用を発揮して汚れを分解します。
この漂白力の元となる酸化作用は汚れに対してだけでなく、
雑菌に対しても分解効果があるので、
除菌効果や部屋干しにおける、
消臭効果を高める手段としても活用されています。
まとめ
漂白剤は含有している成分によって、
分解力(酸化作用や還元作用)の強弱が変わってきます。
さらに助剤として漂白活性化剤が入っているかどうか、
によってもその分解力の程度が変化します。
汚れに対する分解力と繊維の色素に対する影響力は相関があります。
白くする、キレイにすることに執着して強い漂白剤を使うと、
お気に入りの衣類の色が落ちてしまう、
残念な事態に至ることもあります。
繊維の種類と、
漂白剤の製品パッケージを注意深くチェックしながら
最適な組み合わせで使用することが大切です。
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