食品や化粧品に入っている乳化剤って何?
混じり合わない「水と油」
「水と油」ということわざがあります。
「互いに気が合わず反発し合って仲が悪いこと」を意味しており、
それは水と油の関係にように「異質で溶け合わないもの」のたとえです。
上の画像は「オリーブオイルとバルサミコ酢」のドレッシングです。
暫く置いたままにしておくと、オリーブオイルが上に、
バルサミコ酢が下に分かれてきます。
かき混ぜ方が弱いとすぐに分離しますし、
強くかき混ぜてオリーブオイルとバルサミコ酢を細かく分散させても、
長い時間が経つと完全に分離してしまいます。
この現象は水と油が混じり合わない性質を持っているから発生します。
水の比重1に対して油は0.9と、油は水よりも軽いので上方に浮いてきます。
水と油が混じり合う「乳化」という現象
この水と油の中に石けんや合成洗剤などの界面活性剤を入れてかき混ぜると、
水と油は混じり合って分離しなくなります。
このように溶け合った状態は「乳化」と呼ばれています。
界面活性剤は単一の分子の中に、水になじみやすい「親水基」と、
油になじみやすい「親油基」の2つの部分を併せ持っています。
そのために界面活性剤が水と油の境界面に入り込むと、
界面張力を弱めつつ「親水基」と「親油基」のおかげで、
水と油が結び付いて「乳化」状態になります。
私たちにとって身近な食品の中にも乳化されたものがたくさんあります。
マヨネーズやバターなどがその代表例です。
これらの食品には乳化状態を維持するために「乳化剤」が使われており、
乳化の状態によって「水中油型」と「油中水型」という2つのタイプに分類されます。
水中油型
水中油型は、水の中に油を乳化させているタイプです。
表層が水で、その中に油が細かく分散している状態です。
牛乳やマヨネーズがこのタイプです。
牛乳の中には水分と脂肪分(油)が入っていて、
水分と脂肪分(油)だけだと混じり合わずに分離するのですが、
牛乳には乳タンパク質も入っていて、
この乳タンパク質が乳化剤として働いて安定的に乳化状態が保たれています。
マヨネーズの主な原料は、卵、お酢、油です。
お酢(水分)と油だけだと決して混じり合わずに分離するのですが、
卵の卵黄に含まれているレシチンやリポタンパク質といった成分が、
天然の乳化剤の役割をしてくれて、お酢と油を結び付けてくれます。
このように卵によって乳化されることで、
お酢と油が結び付いてから均一に混ざり合って(分散して)、
滑らかな状態になります。
「水中油型」の乳化によって洗剤が汚れを落とす
洗濯機の中へ水と一緒に汚れた衣類を入れます。
その中へ石けんや合成洗剤を入れてスイッチオン。
洗濯機の中で攪拌が始まると、
界面活性剤が衣類に付着している汚れの油分を引き剥がして、
乳化作用が働いて汚れ(油)を水の中に分散して行きます。
実はこれも「水中油型」であり、この作用が洗剤が汚れを落とす原理です。
油中水型
油中水型は、水中油型と真逆で、油の中に水を乳化させているタイプです。
表層が油で、その中に水が細かく分散している状態です。
このタイプにはマーガリンやバターなどがあります。
マーガリンには乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、大豆レシチンなどが使われています。
バターでは乳タンパク質が乳化剤として働いています。
乳化剤が使われている化粧品
化粧品にも乳化剤として界面活性剤が使用されています。
多くの化粧品は水分に油分を混ぜ合わせたものを基本として製造されているので、
水と油が分離しないように乳化剤(界面活性剤)が必要になってきます。
水中油型の化粧品
乳化の状態によって、化粧品は「水中油型」と「油中水型」のどちらかに分けられます。
水中油型の化粧品としては、ローションや乳液が挙げられます。
油中水型の化粧品
クリーム系の化粧品の多くは油中水型に分類されるのですが、
中には逆の水中油型タイプのクリームもあります。
石けんで乳化したクリーム化粧品
合成界面活性剤を使わないで、
石けんによって乳化したクリーム化粧品があります。
昔はこの石けんクリームが主流だったのですが、
最近では合成界面活性剤を乳化剤とするクリーム化粧品がメジャーになっています。
もちろん現在でも石けんのクリーム化粧品は存在していて、
製品パッケージには原料として「カリ石けん素地」と表記されています。
合成界面活性剤の中にはタンパク質と結合する化学物質があって、
もしもこのような化学物質が入っているクリーム化粧品だと、
使う人の体質によっては、化学物質が肌のタンパク質と結合してしまって、
肌荒れが起きてしまう場合があります。
一方で、石けんで乳化したクリーム化粧品は、
石けんが肌のタンパク質と結合する作用がないので、
肌を荒らす可能性が低く、お肌が弱い方々によく使われています。
乳化剤は暮らしに役立ち成分
乳化剤はその「乳化作用」によって製品の品質を安定させるので、
マヨネーズやお惣菜や缶コーヒー、乳液や口紅など、
様々な食品から化粧品まで幅広く使われており、私たちの暮らしに役立っています。
乳化剤の成分チェックが大切
ただし、乳化剤の成分によっては身体との相性が良くない場合もあります。
「乳化剤としてどんな物質が使われているの?」という関心を持って、
食品や化粧品のパッケージに表記されている成分をチェックして、
自分の身体にあっているかどうか確かめてから
購入・使用すれば、より安全に乳化剤の恩恵を受けられます。
前の記事へ
« 薬用歯みがき、薬用ハンドソープの「薬用」って何?次の記事へ
【重曹による掃除のコツ】効果と使い道を一覧で徹底解説 »